おおかみこどもの雨と雪 

おおかみこどもの雨と雪』家族で観てきました。
夫婦は満足。小2の娘は「めっちゃ感動した!泣いた!」と言ってましたが、小5の息子は「あんまり……」。
たしかに小学生男子が面白いと思う映画ではないかな。子どもも観れるけどこれは大人向け。
ハラハラドキドキの展開やカタルシスなんかを求めていくとガッカリかもですが、心に響くいい映画です。
以下、つらつらと感想。ネタバレあり。




全編通して思ったのは花さん聖母すぎ。
どんな苦境でも笑顔で乗り切り、子ども第一、無償の愛を与え続ける……創作だから理想を描くのはいいけど、このキャラは男性じゃなきゃ描けないと思いました。たまには弱音はいたり子どもに冷たく当たって自己嫌悪しちゃったり、そんな姿が少しでもあればもっと感情移入できたかな。
そして許せないのが旦那の変死(笑)サクッとよーわからん死に方すんなー! ってこれ言ったらお話にならないわけですが。
最後の再会シーン、笑顔で抱き着けるのは心の広さ宇宙レベルの花さんだからだよ! そこは出会い頭のアッパーカットだよ!(笑)


心配していたベッドシーンはあっさりでホッ。でも、場内の誰もが内心で一斉にツッコんだはず。おおかみのままで!?
旦那さん「奴らは獣やねん。獣のように愛し合ったんや」
そして学生なのにでき婚。いや、これだけなら何も言いません。避妊したってできる時はできる。(←説得力ww)
でも次の年にもう一人って無計画すぎるでしょ……!
旦那さん「だから奴らは獣だと言っておろーが」
花さん奨学金とバイトで苦労してでも大学で勉強したいことあったんじゃないの?(汗)


……と最初にツッコみたい所だけツッコませてもらってスッキリしたので、あとはよかったところ。
まず映像が素晴らしい。花、森、滝の自然の風景。活き活きとしたキャラクターの動き。雪山のシーンの迫力と爽快感。
幼少期の雪がエネルギーの塊で本当に可愛くて、特に引っ越し後の大きな家や庭を走り回るシーンなどは大好き。
次に、「子育てと親離れ」という普遍性がありつつもアニメでは斬新なテーマを、ファンタジーを交えることで魅力的なエンターテイメントに昇華させながら、しっかり描いていたところ。
動物的だったのに成長するにつれて人間としての生を歩み出す雪と、大人しかったのにやがて狼の生を選択する雨の対照性。
ほどよく笑いを交えながら、子どもたちの成長の軌跡が丁寧に描かれていて、引き込まれました。
教室の横からのアングル移動で見せるそれぞれの学校生活と時の経過、重要なシーンの天候は雪か雨、雪が草平に秘密を明かす場面のカーテン遣い……など、巧みな演出にも感嘆。
余談ですが草平男前すぎて笑った。これはもう結婚するしかない。(でもボクサーの妻か……雪、母子2代で苦労しそうと思ったのは秘密。笑)


一番考えさせられたのは、クライマックスの雨との別れのシーン。
あの後すぐにエンディングになってしまって、正直「え……これで終わり? えええ……!?」と呆然としました。そしてエンドロール見ながら、泣いた。
花さん、切ない。ボロボロになって山を探し回って、クマに遭遇しても息子が颯爽と現れることもなく、御礼の言葉ひとつなくお別れ。
雪も寮に入っちゃって、あの広〜い田舎の家で一人ぽつんと長すぎる余生。あんまりじゃありませんかあああ。
でも、育児って、そういうものかなあと。子どもが自分の輝ける場所を見つけたら、辛くても笑顔で見送るべし。基本、見返りは期待するものではなく。
朝日に照らされて遠吠えする息子の勇姿、それを見ただけで満足する、というか、できるのが、親なのかな。
御礼の言葉はない、と思ったけど、きっとあの遠吠えに花さんは息子の万感の思いを感じとり、報われた思いと達成感を噛みしめたのだと解釈。
でも、やっぱり切ない。頼むから時には顔見せに来てください、雨……。
花さんもまだ若いんだし、これから自分の生きがい見つけて第二の人生謳歌するんだと脳内補完しておきます。でないとやりきれない。


……てな感じで、ラストはすっきりしないながらも納得できる、118分夢中で鑑賞できて、余韻も残る、傑作でした。
同じ監督の「時をかける少女」「サマーウォーズ」より私は好き。