2014年個人的大賞

◆映画部門「her 世界でひとつの彼女」 監督・脚本…スパイク・ジョーンズ
声だけの人工知能と恋に落ちたおじさんの話。折しも「このまま人工知能の研究が進めば人類は滅亡する」とホーキング博士が語ったという記事を読んだその日に観ました。確かにこんな人工知能が生まれた日には、少子化加速は間違いない笑)『現実を見ろ』と罵られる主人公だけど、人工知能があまりにも感情豊かで確実に自らの意志を持っているので、ここまでくるともはやこの存在はリアルだよなと思った。そして、いくら周囲にキモがられようが、個として互いに尊重して幸せな関係を築けているなら、いいんじゃないかと思ったのだけど……後半に二回、どんでん返し。特に最後のひとつの冷や水ぶっかけられた感じは半端なかった。ここが機械と人間の差か、とショックだったけど納得。ラストシーンの身を寄せ合う男女の姿は、動物の生の証であるぬくもりのかけがえなさを描いているようにも読めるけど、私にはむしろ敗者達が傷をなめ合うように見えて切なかった。主人公の職業が手紙の代筆屋というのも、存在しないかもしれないリアルを届けると同時に確かに喜びも生み出すわけで、なんだか暗示的だし、性的な問題も精神的な結びつきで満足できる傾向のある女性ならクリアできるんじゃないかとか、色々考えられる映画で、脚本も洗練されてました。無駄な下ネタが多かったのは残念(笑)


◆少年漫画部門「テラフォーマーズ」 作…貴家悠・絵…橘賢一
少年じゃなく青年向けかな。ずっと旦那さんにお奨めされつつエグイの苦手なんで敬遠してたのだけど、クリスマスに一気読み。敵のインパクトありすぎ。虫も筋肉もグロいのも嫌なのにドラマティックな物語が秀逸で目が離せない。カッコいい人がいっぱい。女性も男前、というか漢。


◆少女漫画部門「赤髪の白雪姫」 作…あきづき空汰
少女漫画じゃ珍しいファンタジーもの。わりと身近な事件を解決しながら絆を深めていく感じが新鮮。キャラがみんな魅力的でピュア。気ままだけどちょっと切ない気持ちも抱えるオビが好きで、執筆中だった作品のキャラにもけっこう影響を受けました。


ラノベ部門「(仮)花嫁のやんごとなき事情」 作…夕鷺かのう
見つけた、おもしろい少女小説! テンポのいいラブコメディですが、シリアス部分の骨格もしっかりしてて、物語に入り込めます。笑えて、ときめき要素もある、勢いのある作品。個人的に今の少女小説は「おこぼれ姫」とこの「仮花嫁」が双璧。


◆小説部門「きみの友だち」 作……重松清
珍しい二人称小説。憧れるような子もいれば問題児もいて、視点が当てられる様々な立場の子どもたち、それぞれに共感できる。懐の広さと温かさが感じられて、ほろりときます。同じ作者の「流星ワゴン」は新春ドラマ化するようですが、こっちの原作もとてもよかった。


◆アニメ部門「ハイキュー!!」 作…古舘春一
バレーボールを題材にした爽やか青春アニメ。主役コンビは驚異的な運動神経の持ち主と天才セッターで、その二人を中心とした成長と進撃を描きつつ、弱小校やレギュラーになれない子にもスポット当てるのが上手い。原作はちょっと絵が見にくかったのですが、アニメは綺麗で演出もよくてハイクオリティ。どの子もひたむきに頑張る姿にグッときました。



来年も、素敵な作品にたくさん出会えますように。そして自分もそんな作品を紡げるようになれますように。