切れ味抜群

夜も更け、布団に入ろうとしたら子どもたち二人が枕と平行に寝ていました。
「いい子じゃないか、ちゃんと隅っこで寝て」
「私は小万里の下に(T字に)寝ればいいわけだね…でも蹴られそう」
「小万里の方に足を向けて寝たらいいんだよ」
旦那さんの提案になるほど、と一度は頷いたものの、
「あ〜でもこっちは北枕だね」
と何気なく口にしたら「はあ?」と思いっきり馬鹿にされました。
「北枕したらどうなるの?」
「なんか早死にしそうなイメージ」
「さっさとシネ!」
彼は昔から迷信の類はすっぱ切ります。
「ひどーい」
北枕ごときで早死にする奴が、南枕にしたところで長生きするとは思えん
「でも方角ってちょっと気になるんだよ。鬼門とかいうし、平安時代は方違えとか物忌みとかって気にしてたわけだし」
「平安人が馬鹿だったって事だろ。あの頃の本を見たらよくわかる…暇人どもめ
「ああ、やたら泣いてたり?でもそれが『もののあはれ』…」
「だと勘違いしてたと」
息もつかせぬ毒舌攻撃。その晩は彼が名刀で大根やら白菜やら(何でもいいんだけど)をスパスパ切り払う映像を思い浮かべながら眠りについたのでした…。