クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(アニメ)

前の2作品はネタ系ですが、こちらは本気でオススメです。


以前から気になっていましたが、土曜日のスペシャルでようやくしんちゃん大好きな息子たちと共に鑑賞することが出来ました。
映画版しんちゃんは大人向け、と言われているだけあり、研磨された脚本には、息抜きはあっても手抜きは無し。難解ではないけれど目の離せないストーリー展開、白熱のカーチェイスバトル、深いメッセージ性は確かに大人標準のハイレベル。
もちろんしんちゃんのちょっとお下品なギャグや軽妙なやり取りは健在なので、息子も飽きずに始終笑いながら(時に爆笑も交えて)鑑賞してました。


とはいえポイントは「昭和ノスタルジー」ですから、この映画の真の対象はやはり30代以降の親世代です。
今でこそ映画、音楽、ファッションと昭和へのオマージュに満ちた作品は珍しくありませんが、しんちゃんはすでにこれを2001年にやっていたのですね。シェーッ。
作品いっぱいに組み込まれた昭和情緒たっぷりの音楽、家電、出来事、有名人、ギャグ…ゆったりとした温かみのある町並み…私は体験したことの無い時代のはずなのに、なぜかその風景は郷愁を誘い、穏やかな時が流れていた自分の少女時代の記憶と共鳴してしみじみさせられます。
しかし単なる懐古調で終わっていないのが、この映画の名作たる所以。
オトナ帝国の企みどおり、「懐かしさ」の虜になって子供化してしまった大人たちの姿は、ひきこもりやニートを連想させますし、甘美な過去を散々描かれた上でだからこそ、後半に込められた未来へのメッセージは胸を打ち、「生きるということ」についてまで考えさせられます。
悲恋、難病、愛する人の死…といった不遇な状況で「泣かせる」話は溢れてますが、「ただ、当たり前に生きている」ことを描いて大きく心を震わせてくれるこの手腕には感嘆せざるをえません。
キーワードとなるのが「匂い」というのもツボ。


もしまだ観たことない方は、是非一度、ご覧になってくださいな。星5つ。