美しさってなんだろう?

「今度顔にヒアルロン酸注射しようと思っててさー」
世間話の中でさらりと友達が言ったので、たまげました。
彼女は少し年上だけど、別に老けて見えるわけではないし、とりわけ肌荒れしてもいません。若々しく、可愛い女性です。
美容整形外科で15万円、打てば1年半くらいキレイな肌が持続できるという話に、私はううむ、と考えてしまいました。
これはそんなにあっさり話題にできるほど「なんでもないこと」なんだろうか。
私にはどうしても違和感があるんだけど、そこまでして保つ「美しさ」ってなんなんだろうか…。


女性の大多数は、より美しく、より可愛くなりたいと日々努力を試みています。(努力しています、と言い切れないのが痛いところ。ぐはっ)
自分が美しいものに惹かれるから、そして美しさに大きな価値をおくこの「社会」があるから。
(特に女性はより外見の美しさを評価されやすいから。)
誰でも自分の存在意義を欲し、才能豊かでありたいと願ってますが、その才能の中でも外見の美しさは(多少人の好みも分かれますが)一番わかりやすい、目に付きやすいものです。
だから、美しさを求めることは、別に変でもなんでもない。先の違和感の原因は、私の中の「プチ整形」への抵抗に
あるのでしょう。


「顔で人生をめちゃくちゃにされた」人が大幅に整形するというパターンは、理解できます。人生をめちゃくちゃに
してたのは顔じゃなくて、腹立たしいけど確かに存在する「ブス差別」の方だとは思うけど、整形によって絶望から
抜けて幸せに生きられるというのなら、祝福したくなります。
一方で、プチ整形。こちらも、ちょっといじって幸せになれるならいいんじゃない?と思えるかというと、別に悪だとは思わないけど、気持ち悪いものが湧いてくるのです。
なんというか、「そこまで執着したくない」という思い。私もダイエットしなきゃ、とか可愛くなりたい、と思うくせに、「そこまで」って何なんでしょう。
一つはおそらく、「プチ」という可愛らしい言葉で軽くしてるけど、整形は整形で、本来の姿ではなく、「つくりもの」じゃないか、という抵抗感。でも、それなら「本来の姿」ってのは何なのかしら。ダイエットは?化粧は?


化粧との違いを考えてみます。
まず、「高額」なこと。でも高い化粧品もたくさんあります。1ヶ月1万くらいかかる基礎化粧品だってあるわけで、
それなら1年続けたら12万、ヒアルロン酸注射とあまり変わらない気もします。
(個人的には3万はでかいけど;余談になりますが、値段が高い化粧品はそれだけ効果も高いだろうし、経済格差がそのまま美貌の格差に反映されるのか、というのはまたちょっと興味深い問題です。)
もう一つは、「病院」で施術を行うこと。化粧の手軽さとは段違い。健康な体を治療する感じがして、奇妙に思えるのかもしれません。醜さは病気なの?


しかし「手軽」という観点で見ると、ヒアルロン酸注射はなかなか際どいラインにあります。
「注射は5分くらいで終わり、化粧や洗顔も直後からできるので仕事前でも気軽にできます。」
(アサミ美容外科HPhttp://www.asami-biyou.com/surgery/hyaluronic.html)とのこと。
この手軽さは、経済的余裕さえあれば、確かに「気軽」なものに繋がりやすそうです。
レーザー脱毛程度には普及しそうな予感もします。
わからなくなってきました。案外大したことないことなのかな…私の頭が固いのでしょうか。


「芸能人もそーゆーのしてるのかな?」
と訊くと、かの友人曰く、「してるでしょー。でなきゃ○○とかあの年であのキレイさはありえないよ」
なるほどさもありなんです。でもそんな裏技あるんなら、キレイorかっこいいのは当たり前だよなー…。
イケメン俳優、美人女優、アイドルといった美しさを売り物にしている人たちは、夢をみせるのが仕事だから
「美」という才能を磨き、維持するのが使命なのでしょう。だから、「プチ整形くらい」仕方ないのかもしれません。
ただ、なんか騙されたというか、スポーツ選手が筋肉増強剤を使ったような感じがするのです。突き詰めれば、「インチキ」に思えるのです。
私はインチキかもわからないものを見て憧れや好意を抱いているのか。いつのまにか周りもカワイイ若々しいインチキばかりになってるのか…。
美への信頼なんて、なんて儚いものだったのでしょう。「美しさ」は一番わかりやすい、目に見える才能だと思ったけれど、実は一番まやかしのきく、不確かなものだったのかもしれません。


そんなことを考えていると、娘のあるがままの可愛さが、とてもかけがえのないものに感じられて、胸を打たれました。
そして、私は、アンチエイジングよりもむしろ、きれいに年をとることを目標にしたいと思いました。ぷるぷるお肌、毛穴なんてないような白磁の肌、艶やかな髪、メリハリボディ…素敵だし、憧れるけど、もっと別の種類の美しさを考えてみたい。
若々しさは、美肌からでなく、紡がれる言葉や考え方、眼差しなどからにじみ出るような、しわがチャーミングにさえ
思えるような、年齢の重ね方。
…とか言いながら、美形に血を騒がせるミーハー病はきっと一生治らないだろうけどw